
人にも感染する病気の予防
毎年ペットの予防を定期的にしている場合、人にとっても実はこんなにたくさんの病気を予防できるというメリットがあります。赤字は人にも感染する可能性のある病気に関係した予防項目です。
ワンちゃんの4大予防
フィラリア予防
ノミ・マダニ予防
狂犬病予防接種
伝染病(レプトスピラ症含む)混合ワクチン
ネコちゃんの3大予防
フィラリア予防
ノミ・マダニ予防
伝染病(クラミジア感染症含む)混合ワクチン
(ネコちゃんのフィラリア・ノミ・マダニ予防は専用の予防しやすいお薬を今年より取り扱います)
フェレットさんの2大予防
フィラリア予防
ジステンパーウイルス感染症の予防
もちろん、ペットさんにとっても重症化したり伝染しやすい病気の予防にもつながります。
予防薬、何を使っていますか?
春になりました。当院でもフィラリアやワクチンをはじめとする各種予防を行っており、お薬や予防法についてのご相談を受けることが増えています。そこで今回は、いつもと違った観点から「予防」について見てみたいと思います。
病気になっても、予防薬は同じでいいの?
例えば、毛穴に寄生し皮膚のかゆみを引き起こす「ニキビダニ症」。皮膚炎で来院された動物を検査すると、時折ニキビダニが見つかることがあります。この病気の治療にはフィラリアの予防薬と同じ成分の薬を使うこともあるため、薬が重複してしまうこともあります。しかも治療期間が長いため、複合タイプの予防薬ですと予防薬自体の再考や予防スケジュールの変更が複雑となり、予防薬の処方に伴う新たなご負担が生じる場合もあります。
ちなみに、ニキビダニはマダニとは種類が違うダニなので、マダニの駆除薬では効果がありません。そのため治療に際しては獣医師の診察をお受けください。
ご家庭でできる!予防を通した健康チェック法
当院が飼い主様に一番お願いしたいこととして、投薬に際して、飲むお薬の場合は「いつもと食べ方が同じかどうか」「お口の臭いや汚れは大丈夫か」「お鼻は異常ないか」「飲み込む仕草に変化はないか」といったところなどを注意してみたり、また皮膚につけるタイプのお薬を使うときは「皮膚の毛艶や脱毛、ふけの状態などが普段と変わりないか」「体を触って嫌がったり痛がったりしていないか」といったところなどを見て頂いたりして、月に一度、愛犬・愛猫の状態を確認する機会にして頂きたいと考えています。
単に病気を予防するだけでなく、投薬を通して普段とは違う角度から、ワンちゃん・ネコちゃんを見て頂くことで、より体の状態についての理解が深まるのではないかと考え、当院からの提案とさせて頂きます。
フィラリアのお薬は要指示医薬品
当院で処方するフィラリアの予防薬は日本国の承認を受けた「要指示医薬品」を使用しています。要指示医薬品の交付には獣医師の処方の指示もしくは処方箋が必要なお薬です。このためフィラリア予防薬の処方には診察が必要となります。「要指示医薬品」は他の医薬品に比べ、使い方を誤ると動物等の健康に影響を与える可能性の高いお薬です。当院では直接動物を診察した上で処方の可否を診断し、お薬をお渡ししていますので、安心してご利用いただけます。
当院で推奨する予防について
ノミ(ネコちゃん・ワンちゃん)
ノミは暖かい季節に多く発生しますが、今ではほとんどのワンちゃん、猫ちゃんが家の中で暮らすようになりました。ノミは暖かいお家の中では冬でも卵からふ化しますから、ノミの予防は年間通してされることをお勧めします。
猫のひっかき病や瓜実条虫(サナダムシの一種)もノミが原因となります。当院で処方する薬は動物用「医薬品」ですので、ノミ駆除の効果がより期待できます。
マダニ予防(ワンちゃん)
マダニは暑い季節に活動が活発になりますから、春から秋にかけて定期的に予防すると良いでしょう。重度の貧血を起こすバベシア症、人にも感染するオウム病、最近報告されている「重症熱性血小板減少症候群:SFTS」もマダニを介して感染します。
当院のマダニ予防薬は、滴下式の簡単に投与できるタイプのもので、ノミも同時に予防できるお薬です。また蚊が近づくのを嫌がる効果(忌避効果)も承認されているお薬です。
フィラリア予防(ワンちゃん・ネコちゃん・フェレットさん)
フィラリアは蚊に刺されることによって感染します。感染すると血管内で虫が成長し、肺や心臓の血管に詰まってしまいます。そのため、重度の心不全や腹水等の循環不全や呼吸不全を起こします。私もフィラリア症のワンちゃんを診察したことが何度もありますが、重症になると大変苦しい思いをしますから、月に一度の投薬で、フィラリア症を予防して下さい。4月下旬から12月までの予防をおすすめします。
内部寄生虫予防
私が小さい頃は、公園の砂場に動物がフンをするため、回虫の卵が問題になったことが一時期ありました。この回虫、今は余り騒がれませんが、ワンちゃんやネコちゃんの検便を行うと今でもよく見られます。ワンちゃんやネコちゃんの回虫卵が人に入り込むと、ふ化した幼虫が体内を移動する事(幼虫移行症)があります。今はご家族と一緒のお部屋で過ごすことが多くなっていますから、生活のパターンに応じて定期的に駆虫されると良いでしょう。
その他の病気について、予防のご希望があればご相談下さい。生活の環境と動物の状態に応じたアドバイスをさせていただきます。また予防時期等のご相談は、お気軽にお問い合わせ下さい。
5月31日までに当院所定の予防をお受けいただいたワンちゃん・ネコちゃん・フェレットさんには、予防をがんばっていただいたご褒美として、先着30名様に病院よりプレゼントがございます。毎年している事だからこそ、「病気のための予防ではなく、ペットと向き合うための予防であってほしい」と、当院では願っています。これからもご家族と一緒に過ごすためにも、病気になりにくい環境作り、体作りをしていきましょう。
「歯の健康」は「体の健康」
健康で長生きをするためには「病気になりにくい体を作る」ことが必要です。そのため「ご家庭で毎日適切な食事をとり、適度な運動をする」「ワクチン接種などの予防医療を受けて頂く」といったことが大切になります。さらに、体の入り口である「お口のお手入れ」をすることで歯周病を予防し、歯周病菌の感染を防ぐことが重要です。
人では糖尿病や心臓病などの生活習慣と、歯周病の関係が深く指摘されています。そのため自分でお口のお手入れをすることができないワンちゃんやネコちゃんたちは、さらに様々な影響があると考えられます。体の健康を保つ第一歩として、まずは歯石を減らして歯周病を予防していきましょう。
「歯石」とは何でしょうか?

写真1:歯の表面に茶色く見えるところが歯石(矢印)です。
食事を取るとお口の細菌が増殖し、数時間後には歯の表面に「プラーク(
このままプラークを放置しておくと、2~3日後には唾液中のカルシウムと反応し、固くなります。さらに数日すると「歯石」となります(写真1)。歯石の表面は細かい凹凸があり、さらに細菌が繁殖しやすくなります。また歯石は常にプラークで覆われているため、歯周病菌が増殖できる環境になってしまいます。
歯石はなぜいけないのか?

写真2:歯槽膿漏のため、歯の根っこが露出(矢印)してしまいました。
歯石は歯周病菌の宝庫です。また歯にしっかりと付着しているため、なかなか取れません。特に歯周ポケットにできた歯石は、歯を支える骨(
このまま歯周炎を放置すると歯槽骨や歯肉の組織が破壊され、化膿し「
歯石の付着を防ごう!

写真3:歯石除去の様子です。取れにくい歯石を定期的に除去していきましょう。
歯石は放置すると全身に影響することがありますので、歯石の予防や定期的な除去が必要です。
お口の汚れがプラークの段階でしたら、適切な歯みがきで大部分のプラークを除去することができます。しかしながら、歯の裏側や歯の隙間など、ご家庭でのブラッシングが難しい場所もあります。そのため、定期的に歯石を除去(写真3)していくことが必要になります。「ご家庭では歯みがき」「病院では歯石除去」と役割を分担してワンちゃんやネコちゃんたちのお口の健康を守っていきましょう。
今回は、歯石の影響についてお話ししました。歯石を除去し、歯周病を予防することは体の健康を保つ第一歩となります。当院の歯石除去は予約制となっております。詳しくは当院へお問い合わせ下さい。
その眼科疾患、歯から来ていませんか?~眼圧検査について~

眼圧計:眼球内部の圧力を測ります。
動物の場合、骨格の関係上、臼歯と眼が近くにあります。そのため、歯根膿瘍などの歯科疾患により眼球が圧迫されることがあり、重症になると顔面が変形することもあります。そこで、顔の変形や歯科疾患が予想される場合、眼圧を測定することで眼球への影響を確認します。
当院では眼圧計(眼球内の圧力を測定する検査機器)を導入し眼科診断の範囲が広がりました。眼圧は眼球自体が圧迫されるほか、緑内障や加齢、血圧の上昇等でも高くなります。そのため、眼圧を測定することで緑内障のように知らない間に進行して失明につながる病気の発見や、眼の健康診断項目としても重要です。
眼圧測定は外来診療で可能です。大切なご家族である動物たちの眼の健康管理にお役立て下さい。